介護・福祉・医療資格講座紹介
ケア資格ナビ> 介護職員初任者研修ガイド> 2040年に介護職員が69万人不足!?政府の対応は?
少し前までは「2025年問題」という言葉を耳にした人も多いかと思います。
2025年には、約800万人に及ぶ「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者になります。
さらに65歳以上の高齢者を含めると、国民の約30%が高齢者となるのです。
高齢化率が急上昇することで生じる医療費や介護費の増大、介護人材不足などのさまざまな問題を、国は「2025年問題」として対策してきました。
さまざまな対策を進めながら2025年が目前となった今、政府は新たに2040年を見据えた指針を発表したのです。
2040年には第二次ベビーブームに生まれた「団塊ジュニア世代」が65~70歳になります。65歳以上の高齢者人口は35%以上になると予想され、ピークとなります。
さらに経済を支える現役世代が急減し、労働力不足は深刻となり、社会保障財源はひっ迫すると予想されています。
このような問題を総称して「2040年問題」といいます。
介護職員数も高齢者人口が増える同時に不足していき、2040年までには現状よりも約69万人増やす必要があると予測されています。
2019年のデータを見ると、日本は高齢化率が約28%で世界のトップです。
2位と3位のイタリアとポルトガルは23%前後ですので、いかに我が国の高齢化率が高いかがわかります。
今後はさらに高齢化率が高まると予測され、介護職員の人材不足がますます深刻化していきます。
厚生労働省の資料によると、2025年度に必要な介護職員は約243万人です。2019年度の介護職員数が約211万人ですので、2025年度には約32万人の介護職員が不足する計算になります。
さらに2040年度には280万人の介護職員が必要と予測され、約69万人を追加で確保しなくてはならないことになります。
国は介護職員を充足させるため、これまでもさまざまな介護人材確保の対策に着手してきましたが、今後はさらに総合的に強化する必要があると発表しています。
年度 | 65歳以上の高齢者人口 | 65歳以上の高齢者の割合 | 必要な介護職員数 | 介護職員の不足人数 |
---|---|---|---|---|
2019年 | 3588万人 | 28.4% | 211万人 | ― |
2025年 | 3677万人 | 30.0% | 243万人 | 32万人 |
2040年 | 3921万人 | 35.3% | 280万人 | 69万人 |
参考:第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について 厚生労働省
高齢者の人口 総務省統計局
将来、高齢となった人たちが問題なく暮らせるように、国は2025年に引き続き2040年を見据えて、総合的な介護人材確保対策を打ち出しています。
おもな取り組みとしては、以下の5つの対策を掲げています。
それぞれの内容をくわしく見てみましょう。
国はこれまでも月額平均0.6万円~2.4万円程度、介護職員の給与改善を行ってきました。さらに2019年には勤続10年以上の介護福祉士に月額8万円が賃上げされるという、2000億円を投じた「介護職員等特定処遇改善加算」を発表しました。
発表により報道では、「介護福祉士に月額8万円」の文字がひとり歩きしましたが、内容は介護福祉士だけでなく介護職員全体が処遇改善を受けられることを目指した政策となっています。
介護業界全体の人材を確保する対策としては、以下のような観点から政策が進められています。
経験やスキルのある介護職員を中心に処遇を改善してくことで、介護の職場へ人材を定着させることがねらいです。
さらに、経験やスキルのある介護職員だけでなく、他の介護職員にもこの処遇改善の収入を充てることができるよう、各施設や事業所に柔軟な運用が認められています。
多くの介護職員の処遇が改善されることで、介護人材の確保を一層進めていく対策となっています。
ただしこの処遇改善では対象となるサービスや加算率、対象者が定められおり、処遇改善加算の対象とならないこともあります。
特定処遇改善加算は以下の図のように、公費1000憶円を含めた2000億円を加算率に応じて、各事業所へ配分しています。
しかし、すべての事業所が加算の対象になるわけではなく、例えば居宅介護支援は非対象サービスなので、特定処遇改善加算の対象とはなりません。
また、加算される事業所で介護職員として働いていても、すべての職員に一律で手当てが支給されるわけではなく、事業所によって支給される職員の人数や支給額も異なります。
引用元:厚生労働省 社会・援護局 福祉基盤課 福祉人材確保対策室 福祉・介護人材確保対策について
特定処遇改善手当が支給される対象者は、上の図のように
A「経験・技能のある介護職員」(介護福祉士として10年働いているような人)
B「他の介護職員」
C「その他の職種」
のように分類されています。
支給パターンとしては、以下の図のような①~③のパターンが想定されており、どのようなパターンで支給するかは各事業所にまかされています。つまり、Aの経験・技能のある介護職員のみ手当が支給される事業所もあれば、すべての職員に支給される事業所もあるということです。
事業所内において対象者がAとBのみで算定する場合(②)は、「AはBの2倍以上の額とする」ことや、対象者がA~Cとなる場合(③)は、「BはCの2倍以上の額とする」ルールがあります。
このようなルールにしたがいながら、雇用者側も介護職員の処遇が改善されるよう調整を行っています。
引用元:厚生労働省 社会・援護局 福祉基盤課 福祉人材確保対策室 福祉・介護人材確保対策について
参考:独立行政法人福祉医療機構 経営サポートセンター リサーチグループ
2019年度介護報酬改定(介護職員等特定処遇改善加算)アンケート
:社会保障審議会 介護給付費分科会 1. 介護職員処遇改善加算について
これまで国は、介護人材確保・育成のために以下のような取り組みを行ってきました。
これまでの取り組みとともに、現在は介護の人手不足の状況を鑑みて潜在的な人材の掘り起こしに着目しています。
どんな人材に着目しているのでしょうか。
上記のような人材をターゲットとして、国は「若年世代の介護事業所へのインターンシップ導入促進」、「離職者のための復職支援の強化」、「元気な高齢者を介護助手とするモデル事業実施」などを推進しています。
さらに2018年には入門的研修を創設し、受講者が研修を修了したあとの就職先まで見据えた支援策を整えています。
その他にも国は介護福祉士を目指す人に向けて「介護福祉士等修学資金貸付制度」を設けています。いったいどのような制度なのでしょうか。
くわしく見ていきましょう。
近年、介護福祉士の養成施設で入学者の減少が著しいことが問題となっています。そのことから、将来の介護業界を支える若い世代が介護業界へ興味関心を持ってくれるよう国は注力しています。
中学や高校でも、国が行っている介護人材確保の取り組みや、「介護福祉士等修学資金貸付制度」に関する情報を進路指導に生かしてもらうように周知しています。
申し込みには養成施設長の推薦が必要(特例あり)で、養成施設を卒業した日から1年以内に介護福祉士の登録を行い、貸付を受けた都道府県内で5年間介護の業務に従事することで、貸付金の返還が全額免除されます。
介護福祉士修学資金貸付制度を利用すると、入学準備金の他に毎月の学費分などが貸付されます。
介護福祉士の学校に興味のある人は調べておくと良いでしょう。
東京都で貸付制度をお考えの方は、くわしくは以下をご確認ください。
>> 東京都の介護福祉士修学資金貸付制度について
参考:厚生労働省 社会・援護局 福祉基盤課 福祉人材確保対策室
:福祉・介護人材確保対策について
:厚生労働省 入門的研修の概要
国はこれまで介護業界の離職防止や人材の定着促進、介護事業所の生産性向上を推進してきました。
これまでの取り組みを見ていきましょう。
今後は上記のような取り組みを並行して行うとともに、新しい対策にも着手しています。
対策のひとつである「生産性向上ガイドラインの策定・普及」のために、厚生労働省は手引きを発行しています。手引きの中では、例えば介護現場でありがちな業務負担(ムリ)、業務のムダやムラを3Mとし、事例にイラストを用いて、どうしたら業務改善が進むかを分かりやすく解説しています。
「認証評価制度ガイドラインの策定・普及」に関しては、介護事業所が人材育成や就労環境等の改善につながる取り組みを行った際に、都道府県が評価・認証を行うシステムを推進しています。一定の水準を満たした介護事業者に対して、認証を付与するシステムです。
都道府県が行った評価と認証が公開されることで、介護の仕事に興味がある人が、介護事業所の就労環境がどのようなものであるかを知ることができます。職場の働きやすさを知ることで、安心して応募してもらうことにつなげたい考えです。
介護業界で働きたい人が求職活動をする際に、どのような職場であるかを具体的に知ることができるようになり、自分に合った職場を選択しやすくなる効果も期待されています。
参考:厚生労働省老健局 より良い職場・サービスのために 今日からできること (業務改善の手引き)
:株式会社 日本総合研究所 人材育成等に取り組む介護事業者の 認証評価制度の運営にかかるガイドライン
これまでは介護業界の魅力を理解してもらおうと、学生やその保護者、進路指導担当者などへ介護の仕事内容を紹介し、介護現場の体験事業などを行ってきました。
今後はターゲット層を広め、若者、子育て層、アクティブシニア層に対してのアプローチを行い、介護を身近に感じてもらえるような催しも積極的に実施します。
おもなプロジェクトとしては「介護のしごと魅力発信等事業」を推進して、積極的に介護の仕事ややりがい、魅力を発信していきます。
事業内容は以下のようなことを行っています。
上記のような試みで介護の仕事に関する情報を積極的に発信することにより、今後はさまざまな世代の人に「介護」について興味関心を持ってもらう考えです。新規の介護人材確保や、社会的な支援のすそ野を広げていくことにつなげていきます。
参考:厚生労働省 社会・援護局 福祉基盤課 福祉人材確保対策室 福祉・介護人材確保対策について
国は2017年には入国管理法改正によって、在留資格として「介護」を創設しました。
介護・福祉系の養成施設を卒業した外国人留学生が、介護福祉士の資格を取得することで、日本への長期就労が可能となる制度です。
従事できる介護業務に制限をかけないなど、介護職員として活躍できる体制を整え、介護人材不足の解消につなげたい考えです。
2020年からの新型コロナウイルス拡大の影響で、外国人労働者や留学生たちが自由に行き来できない状況に陥っています。
各国の政府指導により、技能実習生などの日本への送り出し体制に規制もありましたが、国によっては出入国も再開されています。
これまで外国人による介護人材への期待が大きかっただけに、スムーズな往来が可能となることは喫緊の課題となっています。
参考:厚生労働省 外国人の皆さんへ
:厚生労働省 社会・援護局 福祉基盤課 福祉人材確保対策室 福祉・介護人材確保対策について
これまでも国は介護職員を増やすため、介護現場で働く人々にさまざまなサポートを打ち出してきました。 ウィズコロナの時代になったことで、介護業界はいかに需要があり、重要であるかが改めて示されることにもなりました。
この状況を受けて、国はこれからも介護職員にとって「働きやすい環境づくり」と「キャリアアップしやすい仕組みづくり」を一層推進していくことが推測されます。介護業界に興味がある人は、介護職員を目指すのに良い時期ともいえるでしょう。
介護は社会問題であり、身近な問題でもあります。家族も年齢を重ね、自分自身も年をとっていきます。介護職員不足の将来に備え、また自らの家族のために介護の知識や技術を学んでおくことも大切なことです。
介護の資格には「介護職員初任者研修」のような、介護の経験がまったくない人でも取得しやすい基礎的な資格もあります。社会貢献のためにも、家族のためにも介護の資格取得を考えてみてはいかがでしょうか。
初任者研修の資格の受講は、中高年をはじめとする介護未経験者に対しても門戸は開かれています。スクールでは、とくに研修受講後の就職先まで一体的に支援してくれるので要チェックです!