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ケア資格ナビ> 心理カウンセラーガイド> 海外の心理カウンセラーは身近な相談相手!?日本との違いを紹介
心を病んで会社を休職した人の話や登校拒否のこどもの話を聞くことも、最近では珍しいことではありません。災害や大きな事件のあとに、心理カウンセラーが派遣される話も耳にします。
心理カウンセラーの活躍の場が増えているにも関わらず、日本ではまだまだ敷居が高いともいえるカウンセリングですが、海外の心理カウンセラー事情はどうなのでしょうか?
こちらの記事では、海外の心理カウンセラー事情を中心に、日本との違いもご紹介していきます。
カウンセリングのはじまりは、1900年初頭にアメリカで行われた高校生の就職面接からでした。適正に合わせた職業指導からはじまり、知能測定が行われるようになり、その後精神衛生という流れでカウンセリングのスタイルが確立されていきました。
当初、アメリカでカウンセリングは心理療法を行うことのできる精神科医に限定され、医学的見地を元に一方的に指示をするスタイルが主流でした。
その後、ロジャーズが登場し、これまでの医学モデルから新たに心理学カウンセリングモデルを提唱。
「来談者中心療法」という現在の主流であるカウンセリング・スタイルが確立されていきました。
第二次世界大戦後、心理カウンセラーは軍人の神経症の緩和や社会復帰のために活躍。社会的な認知度が高まることになり、心理カウンセリングはアメリカ社会にとって、とてもポピュラーなものとなったのです。
来談者中心療法とは、「人は自分の問題を自分で解決できる力を持っている」という考えに基づきます。
心理カウンセラーはクライエント自身の成長を信頼し、寄り添いながら傾聴しありのままを受け入れます。その繰り返しを行うことで、クライエントは自身が価値あるものと理解するようになり、自然に回復し問題を解決していけるようになる、という考えです。
このような自然治癒力を引き出すような療法が現在のカウンセリングでも主流となり、心理療法などと組み合わせながら日本でも広く行われるようになったのです。
歴史的な背景からも、アメリカでは心理カウンセラーはとてもポピュラーな存在です。
まるで歯医者にでも行くような感覚で、多くの人が気持ちの不調を感じたらカウンセリングを受けに行きます。
経営者のなかには専属の心理カウンセラーをつけている人もいます。
学校にはスクールカウンセラー、精神科にはメンタルヘルスのカウンセラーがおり、恋人関係や夫婦関係の問題にも心理カウンセラーが関わるなどさまざまなジャンルの心理カウンセラーが活躍しています。
アメリカでは、カウンセリングは精神疾患を治すためだけでなく、心の調子を整えるために受けるものでもあります。メンタルの自己管理をするために、身近な相談相手として日常的にカウンセラーに話を聞いてもらうことは、ごく一般的な行為なのです。
イギリスはメンタルヘルスケアへの関心が高い国といえます。2017年には当時のメイ首相が、すべての中学校でメンタルヘルス教育を広げていく政策を打ち出しています。
数年前には、イギリスの王子がトラウマの克服のためにカウンセリングを受けていたことが話題になったこともありました。
昨今のコロナ禍での不安やストレスに対応するために、約40%の人がメンタルヘルスを管理するアプリを使用しているという結果も出ています。
イギリスでは、特にアメリカカルチャーに触れる機会が多かった世代で、カウンセリングを受ける人が多いようです。
最近では福利厚生で「無料で年5回のカウセリング」を受けられる会社も出てきており、心理カウンセラーの活躍の場が増えている状況です。
日本では1950年頃に、いくつかの中学や高校でアメリカの教育制度を取り入れてカウンセリングが行われたのがはじまりといわれています。その後、1960年に親元を離れて就職する学生の心を支えるために、産業カウンセラーが登場しました。
最近では、企業の相談室や学校などに心理カウンセラーが配置され、心の不調をサポートするようになっています。街中のメンタルクリニックも年々増えている状況です。
介護施設や児童相談所、司法の場など、心理カウンセラーの活躍の場も広がっています。
一方で、日本では「カウンセリングは精神疾患などの心が病気の人が受けるもの」との認識も強く、うつ病などになってはじめてカウンセリングを受けるケースが多いようです。
アメリカ人のように、悩みやちょっとした心の不調を心理カウンセラーに相談する人は、少しずつ増えてはいますが現状ではそう多くはありません。
「心理カウンセラー」という職種の認知度は高いものの、カウンセリングを日常的に受ける敷居はまだ高く、心理カウンセラーの地位も確立途上といえるところです。
日本において海外ほどカウンセリングが浸透していないのは、人々の意識の違いをはじめ、いくつか理由があります。
こちらでは、カウセリングの先進国であるアメリカと日本の、心理カウンセラーやカウンセリング事情の違いを確認してみましょう。
上述したとおり、アメリカではカウンセリングへの敷居は低いです。
病気の人だけではなく、日々の心の安定のためだったり、ちょっとした心の不調を感じた人はすぐに心理カウンセラーに話をしに行きます。
「ストレスを感じたら早めに受ける」という病気の予防的意識を持っている人がたくさんいるので、カウンセリングが日常生活に溶け込んでいるといえます。
一方日本では、心の病と診断された人や、不調を強く感じてはじめてカウンセリングを受ける人がほとんどです。
心の病に対する世間体を気にする人も多く、日常的にカウンセリングを受けるハードルは高いといえます。
日本では、カウンセリングが保険適用になるケースは少なく、とても限定されています。
例えば病院の精神科でうつ病などの精神疾患と診断され、特定の心理療法を医師が行ったときは保険適用になります。
臨床心理士や公認心理師が医師と共同で心理療法を行った際は保険適用となりますが、臨床心理士や公認心理師が単独で行ったカウンセリングには保険は適用されません。
医師はカウンセリングに長い時間を割いてくれることはあまりなく、臨床心理士などが開設するカウンセリングルームでは比較的長時間話を聞いてもらえますが、保険適用にはなりません。
一方アメリカは、日本のような国民全員が入る保険はなく民間の保険となりますが、ほとんどの民間保険はカウンセリングで使えるようになっています。
日本では、精神科医などの医師のみが薬を処方することができます。
臨床心理士や心理カウンセラーが薬を処方することはできません。
アメリカでは州によっては心理カウンセラーが薬を処方することができます。
日本では、臨床心理士で年収200~500万円となっています。
アメリカのサイコロジスト(心理カウンセラー)の場合、年収800万円以上といわれており、年収の差はかなり大きいといえます。
アメリカでは、日本より心理カウンセラーの地位がしっかり確立されていることも、年収の違いに反映されているといえます。
日本の心理カウンセラーの給与事情をくわしく知りたい人はこちら>>
アメリカでは、心理カウンセラーの地位も確立されており年収も日本より高いですが、資格制度も違います。
例えば日本で権威性の高い臨床心理士や公認心理師は修士号で、一般的に大学と大学院の卒業が要件となります。
アメリカでもっとも権威のあるサイコロジスト(心理カウンセラー)は、博士号に基づくもので、社会的にも精神科医と同等レベルとなり、カウンセリングに保険が適用されます。
日本で精神疾患のある患者数は年々増加傾向です。
厚生労働省の資料によると、2002年に約258万人だった患者数は、2017年には約420万人まで増加しています。
コロナ禍もあり、働き方やコミュニケーションの形もますます複雑になっている昨今、先行きの見えない不安やストレスから心を病む人は増え、心のケアの重要性は高まっています。
現状、日本では欧米と比べて、心理カウンセラーに話をしに行くハードルが高いといえます。
しかし、社会の状況的にも心に問題を抱える人は増えています。
今後心理カウンセラーはますます注目され、需要も増えていくと考えられます。
メンタルケアの重要性が浸透し、アメリカのように気軽にカウンセリングに通うようになる日も、そう遠くはないのかもしれません。
この記事を読まれた人は、心理カウンセラーに多かれ少なかれ興味があるのではないでしょうか。
「悩みやストレスを抱えている人の話を聞くことで、少しでも助けになりたい」と思う人は、まずは取得しやすいもので構いませんので、心理カウンセラーの資格にチャレンジしてみましょう。
心理学やカウンセリングの正しい知識を習得することは、悩みを抱える人に向き合うためには必要なことです。
まったく知識がない状態や中途半端な知識では、助けになるどころか相談者を傷つけてしまうこともあり得るからです。
心理系資格として認知度が高いのは臨床心理士や公認心理師ですが、これらの資格は大学や大学院の卒業が必要であるほか、取得までに長い期間がかかり、難易度は高いといえます。
民間スクールで学べる心理系資格は、比較的取得がしやすいものもたくさんあり、2、3カ月程度で取得できる資格もあります。
さまざまな団体でカウンセリングのボランティアも募集していますので、まずは知識とスキルを身に付けて、あなたの思いを実現してみてください。