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ケア資格ナビ> 心理カウンセラーガイド> 心理カウンセラーの歴史とその役割
心理カウンセラーが実施する心理カウンセリングの基本となるのは心理学です。心理カウンセリングは精神分析や心理療法などを用いるため、心理カウンセラーになるためには、心理学のことはもちろん、その手法についても熟知している必要があります。では心理カウンセラーに必要不可欠な心理学はどのように生まれ、心理カウンセリングがどのように成り立ってきたのかを見ていきましょう。
心理学が確立したのは19世紀後半と言われています。この頃ドイツの心理学者ヴィルヘルム・ヴントが心理学研究所を開き、アメリカでも心理学の研究が行われるようになりました。それまでは哲学の一部に心理学へ通じるものがあり、哲学者のルネ・デカルトは心理のメカニズムを学問として捉え、ジョン・ロックは科学的研究を始めましたが、まだ「心理学」は浸透していませんでした。
ヴントは内観法(実験対象者が与えられた刺激によって、どのような思考を持ったかを調査する)を用いて、心理学を研究しました。その後、精神分析学の祖であるフロイト、個人心理学の創始者アドラー、分析心理学の創始者ユングなど、現在の心理療法に大きくつながる学者が数多く誕生しました。
心理カウンセリングは心理学を基本として行われます。相談者が抱える問題や悩みを解決し、自分らしく生活を送ることをサポートすることが目的です。心理カウンセリングの基本となるカウンセリングがどのように始まったのか、その歴史を確認します。
カウンセリングのはじまり
カウンセリングの発祥は20世紀初頭のアメリカで、高校生を対象とした職業指導がはじまりとされています。その頃のアメリカは急速な工業化により経済が発展。一方で本人の適正を考慮せず雇用を進めたため、早期退職者が続出し、転職を繰り返す人が後を絶ちませんでした。また生活苦から犯罪に手を染める人も増え、社会問題となりました。
そのような現状を打破するため、フランク・パーソンズは1908年、ボストン職業相談所を開設。そこでは職業カウンセリングが行われ、相談員はカウンセラーと呼ばれました。
非指示的カウンセリングの開始
1930年代頃は精神科医のみが精神療法(心理療法)を行う資格があるとされ、精神科医が直接的な指示や指導を与え、患者がそれを実践するという方法が主流でした。この指示的カウンセリングは精神科医の医学的知識から判断した一方的なアドバイスとなるため、患者の状態をすべて理解していたとは言い難く、きちんと実践できる人もいれば、まったく実践できない人もいました。
それに対比する形で1940年代にカール・ロジャーズが確立した来談者中心療法は、非指示的カウンセリングと呼ばれ、できるだけ指示や指導を与えず、共感や受容を繰り返すことで、自発的に判断や行動ができるように促すものでした。また相談者とカウンセラーの立場を対等とし、相談者を「患者」ではなく「クライエント」と呼ぶこととしました。この療法はのちに日本でも紹介され、現在でも多くの心理カウンセラーに指示されています。
第二次世界大戦後、軍人の戦争による神経症を緩和したり、社会復帰を手助けしたりするためにカウンセラーが活躍しました。それによりカウンセラーは多くの人に認められる存在となり、療法の研究が盛んに行われるようになりました。
日本でのカウンセリング
日本で初めてカウンセリングが行われたのは1951年と言われています。この頃アメリカの教育制度を取り入れ、学校カリキュラムを改善。数校の中学・高校にカウンセラーが配置されましたが、カウンセラーの教育機関もなく、カウンセリング自体が浸透していなかったため、あまり定着しませんでした。
しかしうつ病や総合失調症、さまざまな依存症などに悩む人の増加、自殺や不登校などが社会問題となってきたことで、改めてカウンセリングが重要視されるようになり、中でも心理的なアプローチから相談者の悩みや問題を解決に導く、心理カウンセラーは不可欠な存在となっています。
誰しも1つや2つ、悩みやトラブルを抱えていると思います。周りに家族や友人がいれば、相談することで解決したり、気持ちが軽くなったりする場合もありますが、「どこにも相談する相手がいない」「こんなこと周りに話すのは…」と一人で抱え込み、どんどん落ち込んでしまうという場合もあるでしょう。このような時、頼りになるのが心理カウンセラーです。
心理カウンセラーは相談者に寄り添い、一度すべてを受け止めます。その上で一方的に指示するのではなく、あくまで相談者が主体となって動けるようにサポートをし、解決の糸口を見つける手助けをします。
近年被災した人々の心のケアが重要視されており、各地で心理カウンセラーが活躍しています。相談者の人生を左右するかもしれない心理カウンセラーの仕事は、個人の家庭環境や性格に合わせて最善の手段や療法を選ぶ必要があります。豊富な知識を要し、一筋縄ではいかないため大変ではありますが、その分やりがいもあると言えるのではないでしょうか。