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介護の職場改善にむけた「介護・保育ユニオン」の取り組み

Unionfukushi

介護の現場は労働環境面での改善が期待される職場のひとつ。今回は介護・保育・障がい者福祉業界全体の改善にむけた取り組みをされている労働組合、介護・保育ユニオンの森進生様にお話を伺いました。

--介護・保育ユニオンができたきっかけを教えてください。

介護・保育ユニオンは、労働条件の向上と福祉業界の改善を目的に、総合サポートユニオンの介護・保育士部として2016年6月に結成されました。総合サポートユニオンは、だれでも、そして1人からでも加入できる個人加盟制の労働組合です。そこに集まった介護士や保育士の方たちが中心となって介護・保育ユニオンがつくられました。

--介護・保育ユニオンの活動内容を教えてください。

職場のことでお困りの方の相談を受け付け、解決や改善のサポートを行っています
休憩が取れない、サービス残業があるといった働き方のことから、虐待や事故といった施設のサービス上の問題など、なんでも相談を受け付け、適切な手段で解決していきます。
介護・保育ユニオンの相談スタッフは実務経験が豊かで法律の知識もあります。それぞれの知見をいかして問題を整理し、解決策を導きます。

--介護・保育ユニオンにはどのような相談が多いですか?

介護や保育の職場からの相談で多いのは、「休憩が取れない」「サービス残業がある」というものです
ほとんどの職場で、利用者数に対してスタッフの数が少ない人手不足の問題があります。そのためとても忙しくて、休憩が取れません。休憩時間が取れないことが当たり前のようになっているため、初めて介護や保育の職場で働いた方は「これも利用者のためだから仕方がない」と思ってしまうのです。しかし、実は違います。

休みなしに働き続けることはスタッフの体に大きな負担で、健康を害する可能性が高まります。そこで、労働基準法は6時間を超えて働く場合に45分以上の、8時間を超えて働く場合には60分以上の休憩をとることを義務付けています。

また、サービス残業=残業代未払いの問題も同じように労働基準法違反です。労働基準法は事業主が必ず守る必要のある法律ですので、違反があっても是正させることができます。

労働基準法違反は、ほぼ100%、解決できます。

--とはいえ、解決するのは大変ではないですか?

そんなことはありません。労働基準法は、労働基準監督署(行政機関)も強く取り締まっている法律です。指導が入れば、改善を免れることはまずできません。それに私たち労働組合には、会社と交渉する権限(団体交渉権)がありますから、労働基準法違反(休憩が取れない、サービス残業があるなど)は、ほぼ100%解決できます。私たちがお勧めすることが多い解決手段は次の2つです。

① 労働基準監督署の活用

残業代の不払い、休憩や有給休暇が取れないなど労働基準法の違反は、労働基準監督署(行政機関)の指導により改善させられることが多くあります。違法の根拠となる証拠の集め方や労働基準監督署への通報のやり方には少しコツがいるので、そんなときは介護・保育ユニオンにご相談ください。どなたでもできるようにサポートします。

介護・保育ユニオンのサポートで解決した事例はこちら>>休憩時間がない、賃金未払いなどを労働基準監督署が是正勧告

② 組合を使って会社と話し合う(団体交渉と言います)

問題の解決を求めて、会社と直接話し合い(団体交渉)を行います。会社は組合との交渉に誠実に応じる義務が法的に課されていますから、これを拒否することができません。会社が不誠実な態度をとった場合には、組合は会社の問題点を社会的に公開するなどの手段をとって、会社に圧力をかけることも許されています。必要な証拠さえ集めれば、労働組合との団体交渉で労働基準法違反の改善を実現できます。

労働トラブルは1人で悩まず、まずは相談してほしい

--これまでに担当された問題で印象深かった事例を教えてください。

初任者研修(ヘルパー2級)持っていた40代介護士の男性Aさんの事例ですね。この方は、労災隠しと未払い賃金をめぐり、介護・保育ユニオンに加入して会社と話し合いを行った方でした。

Aさんは仙台市のサービス付き高齢者住宅を運営する株式会社で働いていました。そこで正社員として採用されたはずが「個人事業主」にさせられていたのです。勤務時間も過酷で1日10時間以上働く日が多く、一番大変なときには40日もの連続勤務。さらに、残業代は払われていなかったのです。

そのような長時間労働の中、労災事故が起きてしまいました。しかし「個人事業主」だからという理由でAさんは労災を使わせてもらえず、自分の健康保険を利用せざるを得ませんでした。法律では「労働者」ではない「個人事業主」には、労働基準法や労災が適応されないことになっており「個人事業主」にされたAさんは大きな不利益を被っていました

Aさんは、残業代が未払いであったことや、労災が適応されないことに大きな疑問を抱いていました。個人で会社と話し合いを行ったこともありましたが、会社はまともに応じてくれません。

そこでAさんは、私たち介護・保育ユニオンに相談し、一緒に話し合い(団体交渉)を行うことにしました。話し合いの中で、X社は「Aさんは労働者であった」と自身の過ちを認めました。そして、労災手続きに協力すること、未払い賃金を支払うこと、労災の上積み補償を支払うこと、社会保険に入社に遡って加入すること、の4点を約束してくれたのです。しかも、たった一度の団体交渉でAさんのトラブルは解決しました。

「ユニオンを使って、すぐに解決  介護事業所(仙台市)の残業代未払い・労災隠し」詳細はこちら>>

実際、労働トラブルを解決することは1人では大変です。Aさんは何とか自分で解決しようと何度も話し合いを行いましたが、話をはぐらかされるだけだったと言います。Aさんの件は、介護・保育ユニオンがサポートすることで解決ができたという典型的な事例です。介護・保育ユニオンが「1人で悩まず、まずは相談してほしい」と発信しているのは、このAさんの事例のように実際に解決ができるからなのです。

--お休みなしで土日祝日も相談を受け付けているんですね。

土日祝日を中心に相談を受け付けているのは、他の相談機関がやっていないためです。多くの相談機関の休みと、働く人の休みは重なることが多いですよね。そこで介護・保育ユニオンは、休みの土日祝日にも窓口を開いて皆さんのご相談を受け付けたいと考えました。私たちスタッフの休みは平日になることが多いです。

介護・保育ユニオンには、介護・保育業界以外からもたくさんの相談が寄せられます。年間でこなす相談件数は1万件に届く勢いですので、作業量としては大変なものです。それでも働く人全体の労働条件を維持改善することが労働組合の目的ですから、日々頑張っています。

介護・保育ユニオンのような組合は組合員と事業主、双方にメリットがあります。

--HPには「組合に加入されていない方でも相談は可能」とありますが、組合に入るとどんなメリットがあるのでしょうか?

組合に加盟することによって、労働組合にしかないさまざまな法的保護や権限を得られるようになります。例えば団体交渉権。これによって、使用者には誠実に組合との交渉に応じる義務が生じます。1人で会社に改善を申し入れても無視されることが多いですが、組合に加入したとたんに、会社は改善の要請を無視することができなくなります。
また、介護・保育ユニオンは介護や保育業界で働く人が多く集まり、業界改善のための取り組みも行っています。そのため組合に加盟すると、業界改善という問題意識を持った現場の人や、NPOの人、弁護士などとつながりを持つこともできます

--事業主のメリットを教えてください。

「介護・保育ユニオンのような組合はスタッフのためのもの」と思われがちですが、事業主にとっても大きなメリットがあります。
組合がない職場では、違法な状態があっても我慢してしまいがちです。それが結果的に過労を招き、事故や虐待が引き起こされることもあります。
確かに、自分たちの違法について雇われている側から指摘されることは、事業主にとっては嫌なことかもしれません。しかし組合との交渉を通して仕事に余裕ができ、職場内の人間関係もよくなれば、サービスの質やスタッフの定着率が向上するはずです。長期的に見れば、組合が職場にあることは事業主にとってもメリットになるのです。

--介護・保育ユニオンの会計は、どのように成立しているかを教えてください。

主に組合員からの組合費と、さまざまな方からの寄付で成り立っています。組合員になるには、加入費(1000円)と毎月組合費(年収400万円未満は月1000円)がかかります。その他、学者や弁護士などの方を中心に、応援していただいている方からご寄付もいただいています。

--HP以外で活動内容を紹介されている場と、これから強化していきたい取り組みなどを教えてください。

TwitterやFacebookといったSNSを通した情報発信も行っています。介護保育業界のニュースや介護・保育ユニオンの取り組みをリアルタイムで知ることができますので、お仕事が忙しく、テレビを見たり雑誌を読んだりする時間がない方にも、出勤時間中やお休み前にSNSをチェックしていただきたいです。SNSは誰でも簡単にアクセスすることができますし、たくさんの方からの相談にもつながりやすいので、今後も宣伝に力を入れていきたいと思います。

利用者のためにもまずは職員が余裕を持って働く

--労働環境などの悩みを持つ人へのメッセージをお願いします。

すでに述べたように、残念ながら多くの事業所では法律違反が横行しています。しかし、きちんとした対応をすれば、休憩は当たり前のようにとれるようになりますし、残業代はしっかり払わせることができます。利用者のために仕方がないのではないか、と思われる方も多いですが、そんなことはありません。利用者のためにもまずは職員が余裕をもって働ける必要があるのです。
また、これから福祉の職に就かれようとしている方には、職場に赴任しておかしなことがあったときにそれを「当たり前」と思うのではなく、「改善できること」と考えてもらいたいです。
私たちにご相談くだされば、必ず適切なサポートをさせていただけると思います。小さなことでも構いません。お気軽にご相談ください。

【取材協力】
介護・保育ユニオン
森進生(もり・しんせい)様
HP : http://kaigohoiku-u.com/
TEL :03-6804-7650
Mail :contact@kaigohoiku-u.com

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