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音楽ボランティアの活動とは?

Musicvolunteer

全国各地の社会福祉施設では、たくさんのボランティアの方々が活躍されています。現在福祉施設や大学病院等でトランペットの演奏活動をされている小出一樹さんに、音楽ボランティアにまつわる様々なお話を伺いました。

日々を一生懸命に生きている皆様に、少しでも楽しいひとときをお届けしたい

--小出さんがボランティアの演奏を始めよう、と決意されたきっかけを教えて下さい。

私は医師として病院に勤務しているのですが、その仕事の中で高齢者施設への往診を行っていたことがありました。施設は入所者の方々にとっての生活の場そのものであり、中には年単位で暮らしていらっしゃる方も珍しくありません。
そんな皆さんの生活に潤いを提供しようと、どの施設でもスタッフの方々が日頃のおやつの時間や季節の節目などに、様々な工夫を凝らしてレクリエーションを行っていたのですが、そんな中で外部のボランティアの皆さんがその一助になっていることを知りました。
私は以前から趣味でトランペットの演奏を楽しんでいたのですが、ボランティアのなかにもそうした趣味を役立てていらっしゃる方々が多々いらっしゃることを知り、自分も何かお役に立てるのでは? と思ったのがきっかけでした

--これまでどのような活動をなさって来たのか教えてください。

これまでは主に高齢者施設や、私が以前勤務していた大学病院での病院コンサートなどで演奏してきました。ほかに障害者施設や地元の小学校など、依頼を頂いたときはなるべくご協力できるようにしてきました。楽器をもって現場へ出向き、食堂、デールーム、ロビー、そしてリハビリ室や作業場など、生活の場をそのままコンサート会場にしてきました。
私は普段はアマチュアのオーケストラでトランペットを演奏しているので、クラシックの曲はある程度イメージがありますが、お客様となる皆さんは色々な世代、立場の方々なので、レパートリーもクラシックだけでなく様々なものを用意する必要を感じていました。ジャンルを絞らず、ジャズでもポップスでも演歌でも、また自分が知っている曲でもそうでない曲でも、何でも有りでレパートリーを広げてきました。お陰でこれまで60曲を超えるレパートリーを蓄えてきました。
病院や施設でのボランティア演奏では、相手は体調の良いお客様ばかりではなく、ベッドに横たわったままであったり、点滴をしながら演奏を聴いていただくといったことも珍しくありません。また高齢者施設では認知症をお持ちの方や、そもそも「あまりこういう音楽には興味がない」という風な方も中にはいらっしゃり、集中して演奏を聴いていただくのが難しそうな場面が多々あります。また、なんといってもこちらも素人ですから、腕(技術)で聴かせるといっても限界があります。ですから、曲目や構成を工夫するのはもちろん、毎回しっかり練習をして真剣に演奏に取り組むことで、皆様のハートに訴えかける努力をしてきました。

--なるほど、色々な工夫や努力をして演奏活動をされているのですね。こういう活動をお一人でなさっているのですか?

いいえ。トランペットという楽器はそれ1本だけで演奏を成立させるのが難しいので、どうしても伴奏をしていただける仲間が必要でした。ある御縁でエレクトーン奏者の方と知り合うことができ、一緒に活動していただけないかとお願いしたところ、快く引き受けてくださいました。
コンビで活動するようになって5年余りたちましたが、活動の意義をよく理解してとても熱心に取り組んでくださり、いまではチームとして、演奏だけでなく企画や曲のアレンジなど重要な役割を担っていただいています。旋律と伴奏という枠を超えて、どちらも主役のデュオという感じで演奏をしています。演奏を聴いていただく皆様との出会いもさることながら、このエレクトーン奏者の方との出会いもとても大切な財産です

--共感して一緒に活動してくれる仲間がいるというのは、心強く大切なことですね。ところで、日ごろのお仕事と両立しての活動には、練習時間の確保など大変な面もあるのではないでしょうか。

そうですね。日ごろの練習は仕事を終え夜家に帰ってから行うほか、エレクトーンの方とのリハーサルも主に平日の夜に行うので、スケジュールや体調のやりくりが大切です。また、以前から所属しているオーケストラでの活動に追加するかたちでボランティアの活動をしているので、曲についての勉強も追加して必要になりましたし、練習のために必要な時間や労力も増えました。
もともと演奏することが大好きですから、日ごろの練習や準備についての苦労は、頑張りでカバーできています。オーケストラ活動との兼ね合いも、ボランティア活動での演奏経験がオーケストラで生かされたり、その逆もあったりと、それぞれの経験が相乗的に役立つ場面が少なくなく、とても有意義に感じています。
またこうした活動は、自分たちの努力以外に家族や周囲の皆さんの理解や協力が不可欠です。これらがそろうことで初めて活動が成り立ちます。ご協力いただいている皆さんには本当に感謝しています。

次のステージに向かって絶え間ないチャレンジを!

--そうしたご苦労をされても演奏活動を続けられている、その原動力はどこにあるのでしょうか。

一番糧になっていることは、単純ですがお客様からの反応、例えば拍手をいただいたり、「よかったよ」といったお褒めの言葉をいただくことです。例えそれが「お義理」と分っていてもやはりとても嬉しくて、そうしたお褒めの声がかかったりするとつい調子に乗ってもう1曲多く演奏してしまったり、是非また演奏させてくださいなどと言ってしまいます(笑)。
これは不思議なことなのですが、お客様の前で演奏していると、時に聴いていただいている皆さんの楽しまれている気持ちが、何か「気」のような感じで私たちに伝わってくることがあります。この現象は、まさに私たちとお客様が音楽を共有できた瞬間なのだと思うのですが、この時音楽を続けていて本当によかったと感じます。この感覚は何物にも代えられないと思うくらい幸せなもので、このことで日ごろの苦労が帳消しになります。そういう経験が次への糧となって、この活動をやめられなくしています。オーケストラでの演奏で感じるものとはまた違う大きな手ごたえであり、音楽の素晴らしさや聴いていただいた皆様との出会いの大切さを実感します

--演奏を皆さんに楽しんでいただくことを通じて、ご自身たちも貴重な経験をされているのですね。今後はどのような活動をされるご予定ですか。

私たちにできる中で、少しでも聴いていただく皆様に音楽の美しさや、トランペットとエレクトーンのちょっと非日常なサウンドを楽しんでいただける演奏を、今後も続けていきたいと考えています。そのためにやらねばならないことは無限にありますが、家族をはじめ日頃ご協力いただいている皆様への感謝を忘れずに、少しずつ、しかし弛まず努力していきたいと思います。

--これからのご活躍を楽しみにしています。本日はお忙しい中、ありがとうございました! 

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