ケア資格ナビ> 特集記事> 介護・福祉関連のコラム記事> 2021年度介護報酬改定のポイントを解説!介護職員への影響は?
介護報酬は3年おきに改定されることとなっています。2021年は改定の年で、昨年から審議されていた事項が4月1日に施行されました。
介護報酬改定で決まった内容は、介護事業所の運営や現場の介護職員にも影響がありますので、どのような内容になるのか気になる方も多いのではないでしょうか。
こちらの記事では、2021年度の介護報酬改定について、最新情報やポイントをご紹介します。
介護報酬とは、介護サービス事業所が高齢者や障がい者に介護サービスを行った際、そのサービスの対価として事業所が受け取るお金のことです。
介護報酬は要介護度やサービスの内容、事業所の所在地などを考慮しながら、サービスの種類ごとに平均的な費用(基準額)が決められます。 介護報酬の基準額は、審議会の意見を聴いて厚生労働大臣が定めることとされています。
介護報酬は、介護サービス事業所の経営状況や物価水準、介護現場の課題などを総合的に勘案しながら、3年おきに改定されます。
厚生労働省は2021年度の介護報酬改定率を、0.70%のプラス改定と発表しました。前回改定時の0.54%プラスよりも上回る改定率となります。
プラスとなった背景として、新型コロナウイルスの影響や介護人材人材不足、厳しい経営環境などがあげられました。
0.70%のうちの0.05%は新型コロナウイルス感染症の対応のための特例的な評価とされており、2021年9月までの期間となっています。
介護報酬の改定率を踏まえ具体的な単位数や基準の見直し案が審議され、2021年4月に介護報酬の改定が施行されました。
介護報酬の改定は、3年ごとに策定される介護保険事業計画に基づいて行われます。計画の内容は、団塊の世代の多くが後期高齢者となる2025年を見据えながら方針が決められてきました。
2021年度の基本方針としては、これまでの計画に引き続き「地域包括ケアシステム」を段階的に構築することに重点が置かれています。
地域包括ケアシステムとは、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい生活をできるだけ長く送れるように、「医療」「介護」「予防」「生活支援」「住まい」のサポートが一体的に提供される体制のことです。
そのほか、緊急重要課題である「介護人材の確保」のための取り組みや「科学的介護」への取り組みなどがキーワードとなっています。
さて、2021年度の介護報酬改定の内容はどのようなものなのでしょうか。厚生労働省の2021年度の介護報酬改定に関する資料をもとに見ていきましょう。
2021年度は、介護報酬改定のベースとなる項目に、新たな項目が追加されています。新型コロナウイルスの影響を受け、「感染症や災害への対応力の強化」が盛り込まれ、5つの柱となりました。他の4項目は2018年度までの改定の流れを受け継ぐ内容となっています。
5つの柱の概要を見ていきましょう。
日頃から感染症や災害への備えをし、感染症や災害が発生した場合でも、介護サービス利用者が安定的・継続的にサービスを受けられる体制を構築するよう推進します。
感染症対策の強化や業務継続に向けた取り組みの強化、災害に対する地域と連携の強化を図った事業所が評価されます。
介護サービス利用者が住み慣れた地域で、尊厳を保ちながら必要なサービスを切れ目なく受けられるような取り組みを推進します。
データを活用して介護サービスの質を評価し、科学的に効果が裏付けられた質の高いサービスを提供するよう推進します。
緊急重要課題である介護人材不足に対応するため、介護人材の確保、介護現場の革新を推進します。
必要なサービスは確保しつつ、適正化・重点化を図るよう推進します。
上記で概要を紹介しましたが、5つの柱それぞれから今回の改定で注目したいポイントをいくつかピックアップしました。
介護サービス事業所に、感染症や災害に対応するための「委員会の開催」や「指針の整備」「研修の実施」「訓練の実施」を義務付けるとされています。(3年の経過措置あり)
また、通所事業所で感染症や災害の影響で利用者が減少した場合、安定的なサービスの提供ができるように、利用者数に応じて柔軟に報酬単価を算定できるようにします。
増え続ける認知症高齢者への対応力を向上させる取り組みとして、無資格の介護職員が「認知症介護基礎研修」を受講するよう、介護サービス事業所に義務付けるとされています。(3年の経過措置あり) また、訪問系サービスに認知症専門ケア加算が新設されました。
医療と介護の連携においては、老健施設の医療ニーズへの対応力を強化するため、かかりつけ医と共同して減薬に至った場合、区分として評価します。
在宅サービスの訪問入浴介護で、新規利用者へのサービス提供前の調整対応についても、新たに評価することなども盛り込まれています。
自立支援、重度化防止に向けたさらに質の高い取り組みも評価されるようになりました。
訪問リハビリテーションで退院・退所後のリハビリテーションの拡充を図るため、退院・退所後3ヵ月以内なら週6回の限度から週12回まで算定が可能になります。
そのほか注目ポイントとしては科学的介護の取り組みの推進です。
CHASE(チェイス)・VISIT(統合してLIFE)へのデータ提出とフィードバックの活用により、PDCAサイクルの推進とケアの質の向上を図る取り組みを推進し、新たに評価していきます。
CHASEとは、介護サービス利用者の状態や提供したケアに関するデータベースで、VISITは通所・訪問リハビリにおけるリハビリ計画書などのデータベースです。
これらのデータを介護サービス事業所が提出し、データベースからフィードバックを受けることで、フィードバックの内容を踏まえたケアを実践できるようになります。
今後、すべての事業所にデータ提出とフィードバックを推進し、ケアの質が向上するよう推進していきます。
介護職員の処遇改善加算要件をより活用しやすいものとするため、特定処遇改善加算について見直しを行います。
仕事と育児・介護の両立ができる環境整備を進め、ハラスメント対策も強化するなど、職場環境改善を推奨します。
人材確保が難しい昨今の状況を鑑みて、介護サービスの質を確保しつつ介護職員の負担が重くなりすぎない程度に、人員配置の緩和を各サービスで進めます。
見守り機器100%の導入やインカムの使用などを要件に、従来型特養の夜間配置基準を緩和します。
介護現場の業務負担を軽減するため、利用者への説明・同意や所記録の保存・交付について電磁的な対応を原則認める、などがあります。
必要なサービスは残しつつ、利用の少ないサービスや過剰なサービスは見直しが行われました。
夜間対応型訪問介護では月に一度も訪問サービスを受けていない利用者が存在するため、定額オペレーションサービス部分の評価の適正化を行います。
介護予防サービスのリハビリテーションについては、長期利用の場合の評価の見直しを行います。
生活援助の訪問回数が多い利用者のケアプランは、事務負担を鑑みて検証の仕方や届出頻度の見直しを行う、などがあります。
以上のポイントの他にも介護報酬改定の審議では多くの推進項目や新たな評価、見直しなどが示され、了承を得ました。 新たに新設された内容など、おもな事項については厚生労働省の資料から参照できます。
厚生労働省資料>>令和3年度介護報酬改定の主な事項について
2021年の介護報酬改定によって、介護現場で働く人の影響はどのようなものがあるのでしょうか。
今回新たに追加された感染症に対する事項から、現場の介護職員に感染症の研修や訓練が行われることとなるでしょう。
また、介護の資格を持っていない介護職員は「認知症介護基礎研修」を受講することになります。
CHASEなどのデータベースの活用が推進されていきますので、今後ますます介護サービス事業所のICT化は進み、PCなどを使いこなせる介護職員は重宝されることになるでしょう。
団塊世代が後期高齢者となる2025年も目前となり、介護人材不足への対応は緊急かつ重要事項です。今回の改定でも重要視されていますので、介護職員の働く環境の整備や待遇の改善は進んでいくと思われます。