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介護職員の給料、2022年2月から引き上げ決定

Kaigo Salary 202202

政府は2021年11月、過去最大規模となる55.7兆円の経済対策を閣議決定しました。
閣議決定の中には、2022年2月から

  • 介護職員・保育士の賃金を月額9,000円引き上げ
  • 看護師の給料を月額4,000円引き上げ

という内容も盛り込まれました。

賃上げは2022年2月から9月までは主に「介護職員処遇改善支援補助金」でまかなわれ、さらに2022年10月以降は「介護職員等ベースアップ等支援加算」という臨時の介護報酬改定を行い、賃上げの効果を維持していく予定です。

なお介護職員の賃上げは、居宅介護支援、福祉用具貸与、訪問リハビリテーション、地域包括支援センターは対象外となっており、居宅や地域包括で働くケアマネージャーは現状では対象外となっています。

合同会議で介護職員の給料アップも強調

閣議決定の前には岸田首相が設置した「全世代型社会保障構築会議」と「公的価格評価検討委員会」の初の合同会議が開催されていました。そこで岸田首相は「看護、介護、保育、幼稚園などの現場で働く方々の収入の引き上げは最優先の課題」と強調しました。

全世代型社会保障とは、

  • 一定所得以上の高齢者に社会保障費を負担してもらい、現役世代の負担上昇を抑える
  • 年金・医療・介護のように高齢者への給付が多い社会保障を、子育て支援など若い世代へも給付を広げる

ことで、「すべての世代が負担能力に応じて負担し、すべての世代に給付やサービスの対象を広げる」仕組みです。
全世代型社会保障構築会議は、この仕組みを構築しようとする会議です。

公的価格評価検討委員会とは、公的な仕組みで収入が左右される看護師・介護職員・保育士らの収入アップに取り組むための委員会です。

介護職員の賃金アップの背景は?

分配戦略で経済の成長へ

今回の賃金アップの背景は、岸田首相が掲げる「分配戦略」があります。
分配戦略を簡単に説明すると、次のようになります。
まずは働く人の賃上げを国が促進し、給料を上げます。給料が増えたことで、人々の消費は増加します。消費の増加で経済が活性化すると、国の税収も増えます。増えた税収を賃上げなど何らかの形で再び分配することで、次の成長につなげてていきます。

分配戦略とは
  1. 働く人の賃上げを国が促進
  2. 昇給により人々の消費が増加し
    経済が活性化
  3. 国の税収が増加
  4. 増加した税収を分配し次の成長へつなげる

その分配戦略の柱のひとつとして挙げられたものが「看護・介護・保育などの現場で働いている方々の収入を増やしていくこと」でした。
公的な仕組みで決まるこれらの職種の賃金を先行して引き上げることで、他の職種の賃金引き上げの呼び水とし、成長と分配の好循環へつなげていきたい考えです。

経済の支え手を増やすため

少子高齢化が進む日本で経済の支え手を増やしていくには、女性や高齢者の就労を今以上に増やしていくことが必要です。そのためには子どもや家族を安心して任せられる保育や介護サービスの充実が求められてきます。
給料を上げることで、保育士や介護職員不足の改善も期待されます。

住みやすい地域づくりのため

安心して地域で暮らしていくためには、社会保障の充実が重要です。
高齢になっても安心して暮らしていくためには、介護サービスを行う介護職員は不可欠な存在です。介護サービスを担う介護職員の定着・確保のため、介護職員の処遇改善は重要とされています。

介護職員・保育士、看護師の現状の給料は?

岸田首相は、介護職員や保育士、看護師の収入を決めるベースとなる「公的価格」のあり方を見直すと公言しています。介護職員や保育士は、以前から他の業界に比べて収入の低さを指摘されていました。

実際ボーナスなどを含めた職種別の平均月収は、2020年の全産業平均が352,000円に対し、介護職員が293,000円、保育士が303,000円、看護師が394,000円となっています。

看護師は全産業の平均よりも高めではありますが、医師に比べると4割程度となっていることやコロナ禍での緊迫した労働への配慮もみられます。

2020年度 職種別平均月給
職種 平均月給
全産業 352,000円
介護職員 293,000円
保育士 303,000円
看護師 394,000円

介護福祉士へ月額8万円支給は実際どうなった?

給料アップといえば「処遇改善のため、2019年10月から勤続10年以上の介護福祉士に月額8万円相当を支給」という話題を覚えている方も多いと思います。実際はどうなったのでしょうか。

話題となったのは「特定処遇改善加算」という制度ですが、最終的には「勤続10年以上の介護職員を基本とし、技能等を踏まえて各事業所の裁量で支給対象や支給額を設定する」こととなりました。
介護福祉士だけでなく他のベテラン職員にも支給したり、職場によっては職員全員へ支給することも可能な制度となったのです。

決まった予算を各事業所の裁量で配分することになったため、ベテランの介護福祉士だけでなく、公平に全職員に支給した事業所が約7割となりました。結果、実際に8万円支給された介護福祉士は一握りとなったようです。

しかし、制度としてはしっかり実施され、ベテランの介護福祉士をはじめ介護事業所で働く多くの職員の賃上げにつながりました

今後も介護職員の給料アップは期待

高齢化が進み、介護人材不足が待ったなしの課題となるなか、介護職員の処遇改善はつねに話題になっています。

介護職員は介護サービスの充実を担う存在として、ますます重要な存在となっています。介護サービスの充実が、社会全体の働き手の確保や暮らしやすさにもつながるからです。

「公的価格評価検討委員会」が設置され、今後も介護職員の給料が適正なものになるよう調整は進められていく予定です。
介護業界で働く方にとっては、持続的な給料アップが期待できるといえるでしょう。

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