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簿記とは、企業や団体の経営活動を「記録・計算・整理」して、経営の状況を明らかにするスキルです。
簿記を学ぶと、経理・財務・会計業務に必要な知識が身につき、基礎的な経営管理能力に結びつきます。つまりコスト管理能力を持っていると、経理業務だけでなくビジネスマンとして業務の幅が広がります。
簿記の資格は、今まさに経理の仕事に就いている人や、これから就こうとしている人が数多く取得しています。
さらに上位資格が税理士の受験資格になっているため、キャリアアップのために取得する人もいます。
また、簿記を推薦入試の基準としている大学もあります。簿記は、「日商簿記」だけで、年間60万人程度の人が受験する人気のある資格です。
そんな個人のスキルを証明できる簿記の資格ですが、検定試験に関しては3つの団体が主催・実施しています。
ビジネスシーンには欠かせない経理業務のベースとなる簿記ですが、簿記の検定には「日商簿記」「全経簿記」「全商簿記」の3種類があります。
主催 | おもな受験者 | |
---|---|---|
日商簿記検定試験 (日商簿記) |
日本商工会議所 | 大学生や社会人など |
簿記能力検定 (全経簿記) |
公益社団法人 全国経理教育協会 | 専門学校生 |
簿記実務検定試験 (全商簿記) |
公益財団法人 全国商業高等学校協会 | 高校生 |
それぞれの検定試験は受験者に特徴が見られます。以下で解説しますが、受験者に制限があるというわけではありません。
簿記の検定試験・試験スケジュールについて見ていきたいと思います。
実際に簿記の試験を受験するとなると、検定試験はどんなスケジュールで実施されているのでしょうか。
3つの検定試験について見ていきましょう。
試験日 | 受験料 | ||
---|---|---|---|
日商簿記 | 1級 | 6月・11月 | 7,850円 |
2級 | 6月・11月・2月 | 4,720円 | |
3級 | 2,850円 | ||
簿記初級 | 試験施行機関が日時を決定 | 2,200円 | |
全経簿記 | 上級 | 7月・2月 | 7,800円 |
1級 | 5月・7月・11月・2月 | 商業簿記・会計学:2,600円 原価計算・工業簿記:2,600円 |
|
2級 | 商業簿記:2,200円 工業簿記:2,200円 |
||
3級 | 2,200円 | ||
基礎簿記会計 | 1,600円 | ||
全商簿記 | 1級 | 6月・1月 | 1科目につき1,300円 |
2級 | 1,300円 | ||
3級 | 1,300円 |
簿記の検定試験は一年に数回実施されているものが多いことが分かります。ただし、上級資格は毎回実施されていない場合もありますので、きちんと確認しましょう。
それぞれの団体でレベル別に検定試験が実施されています。各検定試験について具体的に見ていきたいと思います。
まずは最も受験者数が多く、求人の条件としてもひんぱんに目にする「日商簿記」の検定試験についてです。
日商簿記は、日本商工会議所が主催する簿記の検定試験です。
大学生や社会人など一般向けで、1級~簿記初級の4つのレベルに分かれています。
レベル | レベル内容・基準 |
---|---|
1級 | ・極めて高度な商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算を修得。 ・合格すると税理士試験の受験資格が得られる。 |
2級 | ・企業から最も求められている資格の一つ。 ・企業活動や会計実務を踏まえ適切な処理や分析を行うために求められるレベル。 |
3級 | 小規模企業における企業活動や会計実務を踏まえ、経理関連書類の適切な処理を行うために求められるレベル。 |
簿記初級 | 簿記の基本用語や複式簿記の仕組みを理解し、業務に利活用することができる。 |
日商簿記の検定試験は、年齢・性別・学歴等に関係なく、誰でも受験することができます。
各級の試験科目や試験時間、試験方式、合格基準は以下の通りになります。
試験科目・試験時間 | 【商業簿記・会計学】90分、【工業簿記・原価計算】90分 |
---|---|
試験方式 | 会場試験 |
合格基準 | 70%以上の得点(ただし1科目ごとの得点は40%以上) |
合格率 | 【157回】7.9% 【156回】13.5% 【153回】9.8% 【152回】8.5% |
試験科目・試験時間 | 【商業簿記・工業簿記】90分(原価計算を含む・5題以内) 会場試験・ネット試験 |
---|---|
試験方式 | 会場試験・ネット試験 |
合格基準 | 70%以上の得点 |
合格率 | 【157回】8.6% 【156回】18.2% 【154回】28.6% 【153回】27.1% |
試験科目・試験時間 | 【商業簿記】60分(3題以内) |
---|---|
試験方式 | 会場試験・ネット試験 |
合格基準 | 70%以上の得点 |
合格率 | 【157回】67.2% 【156回】47.4% 【154回】49.1% 【153回】43.1% |
試験科目・試験時間 | 40分 |
---|---|
試験方式 | ネット試験 |
合格基準 | 70%以上の得点 |
合格率 | 【2020年度】63.1% 【2019年度】59.4% 【2018年度】57.9% (年度:4月1日~翌年3月31日まで) |
「簿記初級」は、簿記の基本原理や企業の日常業務で活用できるような簿記の知識が出題されます。「1級」に合格すると、税理士の受験資格とみなされます。
次に、上級合格者は税理士の受験資格とみなされる「全経簿記」について見ていきましょう。
全経簿記は、「公益社団法人 全国経理教育協会」が主催する簿記の検定試験です。
全経簿記の検定試験は誰でも受験できますが、協会が指定した専門学校の学生が多く受験します。検定試験は、上級~基礎簿記会計の5つのレベルに分かれています。
レベル | レベル内容・基準 | |
---|---|---|
上級 | 商業簿記・会計学 | 上場企業の経理担当者、会計専門職、税理士や公認会計士を目指す人向け。 |
工業簿記・原価計算 | 上場企業の経理担当者、会計専門職、税理士や公認会計士を目指す人向け。 | |
1級 | 商業簿記・会計学 | 大規模企業の経理・財務担当者、経営者として、全般的な管理のための帳簿などが作成できること。 |
工業簿記・原価計算 | 製造業の経理担当者・管理者として、製造原価報告書および製造業の損益計算書と貸借対照表などを作成できること。 | |
2級 | 商業簿記 | 中規模企業の経理・財務担当者、経営者として、資本の調達・運用活動の管理のための帳簿などを作成できること。 |
工業簿記 | 現場の経理担当者として、工程管理のための原価に基づく基本的な帳簿などを作成できること。 | |
3級 | 小規模企業の経理担当者や管理者として、管理のための基本的な帳簿などを作成できること。 | |
基礎簿記会計 | 会計・経理事務担当者として、組織管理のための基本的な帳簿などを作成できること |
全経簿記の検定試験は日商簿記の検定試験と同様の科目で、レベルも似たような条件で分類されています。また「上級」に合格すると日商簿記と同様、税理士の受験資格とみなされます。
各級の試験科目や試験時間、試験方式、合格基準は以下の通りになります。
試験科目・試験時間 | 【商業簿記・会計学】90分、【工業簿記・原価計算】90分 |
---|---|
試験方式 | 会場試験 |
合格基準 | ・1科目100点満点とし、全科目得点70点以上を合格とする。 ・各科目の得点が40点以上で全4科目の合計得点が280点以上を合格とする。 |
合格率 | 【201回】14.19% 【199回】15.40% 【197回】15.27% 【195回】16.28% |
試験科目・試験時間 | 【商業簿記・会計学】90分、【工業簿記・原価計算】90分 |
---|---|
試験方式 | 会場試験 |
合格基準 | 1科目100点満点とし、全科目得点70点以上を合格とする。 |
合格率 | 【商業簿記・会計学】 【201回】26.35% 【200回】46.84% 【199回】43.38% 【198回】23.88% 【原価計算・工業簿記】 【201回】63.02% 【200回】55.56% 【199回】55.40% 【198回】55.26 % |
試験科目・試験時間 | 【商業簿記】90分、【工業簿記】90分 |
---|---|
試験方式 | 会場試験 |
合格基準 | 1科目100点満点とし、全科目得点70点以上を合格とする。 |
合格率 | 【商業簿記】 【201回】53.45% 【200回】57.81% 【199回】65.73% 【198回】47.14% 【工業簿記】 【201回】56.24% 【200回】85.40% 【199回】77.19% 【198回】75.24% |
試験科目・試験時間 | 【商業簿記】90分 |
---|---|
試験方式 | 会場試験 |
合格基準 | 100点満点とし、得点70点以上を合格とする。 |
合格率 | 【201回】54.37% 【200回】71.04% 【199回】77.99% 【198回】61.26% |
試験科目・試験時間 | 【基礎簿記会計】90分 |
---|---|
試験方式 | 会場試験 |
合格基準 | 100点満点とし、得点70点以上を合格とする。 |
合格率 | 【201回】75.82% 【200回】79.93% 【199回】81.20% 【198回】91.67% |
参考:簿記能力検定試験 公益社団法人 全国経理教育協会
簿記能力検定試験出題基準および合格者能力水準 公益社団法人 全国経理教育協会
上級から2級については、全科目が合格となった時点で各級の取得となります。
これらのほかに簿記の検定試験には、高校生向けの検定試験もあります。その「全商簿記」について見ていきましょう。
全商簿記は、「全国商業高等学校協会」が主催する簿記の検定試験です。
試験内容は、高校で使用している教科書に基づいて出題されます。そのため基本を重視した試験となっており、これから社会人としてステップアップをはかる人向けの検定試験です。
レベル | レベル内容・基準 | |
---|---|---|
1級 | 会計 | 株式会社の会計処理を中心に、会計法規や企業の業績測定などに関する内容。 |
原価計算 | 製品の製造に要した金額(原価)の計算手続きについて出題。 | |
2級 | 商品売買業を営む個人企業の発展的な会計処理と、株式会社の基本的な会計処理について出題。 | |
3級 | 商品売買業を営む個人企業の基礎・基本となる会計処理について出題 |
全商簿記の検定試験は、誰でも受験することができます。1級は、会計と原価計算の2つの科目に合格すると1級取得となります。
各級の試験科目や試験時間、試験方式、合格基準は以下の通りになります。
試験科目・試験時間 | 【会計学】90分、【原価計算】90分 |
---|---|
試験方式 | 会場試験 |
合格基準 | 各科目70点以上の得点 |
合格率 | 【会計】 【91回】57.5% 【90回】25.5% 【89回】38.1% 【88回】36.6% 【原価計算】 【91回】55.9% 【90回】53.7% 【89回】46.4% 【88回】42.2% |
試験時間 | 90分 |
---|---|
試験方式 | 会場試験 |
合格基準 | 70点以上の得点 |
合格率 | 【91回】57.8% 【90回】34.5% 【89回】48.2% 【88回】39.0% |
試験時間 | 90分 |
---|---|
試験方式 | 会場試験 |
合格基準 | 70点以上の得点 |
合格率 | 【91回】67.8% 【90回】42.3% 【89回】68.0% 【88回】43.6% |
簿記の検定試験は、3つありそれぞれに特徴があることが分かりましたね。
簿記検定について理解したところで、簿記の資格を取得するメリットとはどんなことなのでしょうか?
簿記の資格を取得すると、さまざまなメリットがあります。
どんなメリットがあるのか、見ていきたいと思います。
簿記は推薦入試の基準として、多くの大学で取り入れられています。特に、経営・経済・商学部に関連した学部や学科のある大学での導入が多くみられます。その他、ビジネスやマーケティングなどの学部でも基準となっている大学がありますので、関連した学部への進学を目指している人にとっては耳寄りな情報です。
また簿記は企業が求人の際、応募者に求める資格ランキングの上位にもなっています。ビジネス全体を見通す力として、簿記の資格は企業から評価されています。
実際に社会人として社会に出てみると、業務の中でどの部門に所属していても、諸費用に関する内容は常についてまわることに気づかされます。
簿記で学ぶ内容は、経理部門で役に立つことは当然ですが、その他の部門でも業務で先を見通す力となり役に立ちます。
また商社や金融、製造業などでは、簿記検定の合格を求められたりする場合があります。就職する前に資格を取得しておけば、同期に差をつけることができます! 起業したい人にとっても大きな武器となるでしょう。
簿記の資格の中でも、日商簿記の1級と全経簿記の上級を取得すると税理士の受験資格となります。それぞれの合格率を見ると日商簿記の方が低く、難易度が高い傾向にあります。
合格率だけを見ると、「ただ税理士の受験資格だけを取得したい」という人にとっては、全経簿記の上級の方が合格しやすい傾向にありますが、知名度は日商簿記の方が高いので、目的によって選択は変わるでしょう。
キャリアアップとして代表的な職業は税理士をあげることができますが、簿記の資格を取得してキャリアアップをはかっている人は他にもいます。
公認会計士・ファイナンシャルプランナー・中小企業診断士・社会保険労務士などを目指している人の中には、簿記の資格取得を足がかりにしてキャリアアップをしている人がいます。また経営コンサルタントとして、活躍している人もいます。
では簿記の資格を取得して、実際にはどんな仕事に就くことができるのでしょうか。
まず、「簿記の資格を取得してできる仕事」としてあげられるのは、企業の経理や財務、会計部門などでの業務です。
企業を動かす資金の調達や資金計画、お金に関する入出金管理などの業務は簿記の資格を生かすことができます。
税理士事務所や会計事務所の求人の条件でよく目にするのは、「簿記2級」です。
日商簿記2級を取得していると、高度な簿記スキルを修得し、財務諸表の数字から経営内容を把握できると判断されるため、税理士事務所や会計事務所のスタッフとして採用に近づきます。
経営コンサルタントとして働く場合、特定の資格取得は必須ではありません。一般的に企業や店舗などの経営診断を行い、どうしたらクライアントの目標を達成できるか、解決策を提案していきます。
経営コンサルタントにはさまざまな依頼がありますが、利益を生むための案件が多いため簿記で資格を取得していると信頼度がアップします。
会社を起業した経営者は「経理・財務・会計」の流れについて、理解する必要があります。会社の目指しているビジョンに向けて、どのように経営資源を運用していくのか、最終決定は経営者です。
簿記の学びが会社の将来に生かせることは言うまでもありません。
簿記の資格で活躍できる職場はさまざまな場所にあり、上記のように経理スタッフとして働ける企業はもちろん、自分が起業した会社においても役立てることができます。
税理士事務所や会計事務所は全国的にも多数開業していますので、働きやすいと言えるでしょう。
さて、簿記に興味がわいた人も多いことでしょう。即戦力になれる魅力の資格、簿記ですがどんな人に向いているのでしょうか。
経理業務に就くなら、やはり経理・財務・会計業務のスキルを持っている人は安心です。業務の的確さ・能率なども備わっているとなお良いでしょう。
毎月決まっている締日などで、苦労することがなくなります。
公的な書類を記録し、管理することが多くなるため、時間に追われることがあります。
いつ・どこで・どのように資金を運用していくかを、適宜冷静に判断していくことが求められることがあります。
どんなに忙しくても頭の回転がはやく、時間に追われているような雰囲気を周りに感じさせない努力ができる人は経理業務に向いていると言えるでしょう。
将来の会社像などを常に心がけて業務に就いていれば、他部署で働く人たちの気持ちを理解することができ、良好な人間関係を築くことができるでしょう。
また経営者なら会社の基軸となる資金を動かす経理業務について精通し、先を見通す力を持っていると、会社経営の発展に生かすことができます。
経理の業務は諸表の訂正などで他部署に連絡する内容が多いので、そんなときは、相手の立場にたって「お忙しいですよね?」などと状況に理解を示しながら依頼するなどの配慮が必要です。
さまざまな部署との連携で経理の業務は成り立つので、締日が迫っていても謙虚な気持ちで依頼するコミュニケーション術を持っている人が向いています。
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